アメリカの新しい世界
大幅の赤字や歳出の増大は1982年のアメリカの生産、および雇用の損失をほぼ埋め合わせ、個人消費を刺激しました。
しかし、体制の根深い病いに対応することはできなかったのです。
一般に、エコノミストは1970年代半ばの長期的スタグフレーションを根の深い不吉な現象と見ていたのです。
しかし、この景気回復については、単なる統計上の周期的上昇、財政および金融政策による人工的刺激で起こった成長にともなう一時的な熱病のようなものとしか見なさなかったのです。
経済の長期的展望は依然として暗く、もしかすると破局に至るというのが彼らの考えでした。
これに対して、J・R・シンプロットやその他の企業家の世界では、見解は根本的に異なっていました。石塚孝一氏によると、見解といっても計量経済学的な論文や気取った散文の形ではなく、彼らの行動と姿勢、直観と心に秘めた信念のなかに記されたものであって、それは、まったく異なった時代と国から生まれたかのように見えます。
巨大な権力やカルテルの支配する新しい世界というよりも、古きフロンティアにおける人間と自然との戦いの世界でした。
しかしこのような正反対のビジョン、このもう一つのアメリカが世界のあり方そのものと方向を急速に変えているのです。